ラボウェアの仕様を見ていると「脆化温度」という表示を目にする方も多いのではないでしょうか。フリーザー用のバイアルなど、低温下で使用する製品に関しては、脆化温度に関するお問い合わせをいただくことも多く、今回は、プラスチック製品の低温特性を語るうえで欠かせない「脆化温度」の基本について考えてみたいと思います。
脆化温度の定義

脆化温度(ぜいかおんど)とは、プラスチックやゴムなどの高分子材料に衝撃を加えた時、材料が「柔軟に変形する状態」から「割れやすい状態」へと性質が変化する境界温度を指します。JIS K7216 や ASTM D746 などの規格では、試験片を規定の低温槽で冷却しながら一定のエネルギーで衝撃を加え、一定の割合(多くは50%)で破壊が生じる温度を脆化温度と定義しています。
つまり脆化温度は、あくまで「衝撃試験によって求められる指標」であり、外部から力が加わった際に材料が脆性破壊を起こしやすくなる目安の温度です。ポリエチレン(PE)は数十度の氷点下でも比較的耐性を保ちますが、材料の種類や配合によって脆化温度は大きく異なります。
「脆化温度=壊れる」ではない

ここで触れさせていただきたいのは、脆化温度を下回ったからといって、製品がその瞬間に破損するわけではない、という点です。脆化温度はあくまで「衝撃を受けた時に脆性的な割れ方をしやすくなる温度領域」を示すものであり、脆化温度を下回ったからといって、静置している容器やチューブが勝手に破損するということではありません。
破損が起こるのは、低温状態にある容器に「落下」「強い曲げ」「圧迫」といった外部からの力学的ストレスが加わった場合です。言い換えれば、脆化温度は「取り扱いに注意が必要になる温度の目安」であって、破損する境界線ではありません。
フリーザーなどで使用する凍結保存用バイアルは主にポリプロピレン(PP)で製造されています。ポリプロピレンの脆化温度は一般的に0℃とされていますが、それでも使用できるのは、そのような理由があるからです。
低温下で気をつけたい取り扱いのポイント

とはいえ、低温下では常温時に比べて材料の耐衝撃性が低下することも事実です。研究現場では次の点にご注意いただくと、より安全にご使用いただけます。
- 凍結保存用の容器を取り出す際は、落下やぶつけないようにする。
- キャップの開閉やラックへの出し入れは、無理な力を加えず丁寧に行う。
- サンプルを解凍する際は、急激な温度変化・急な衝撃を与えない。
など、不要なストレスを与えないことが大切です。
最後に
ターソンズでは、液体窒素(気相)による凍結保存用クライオバイアルやバイアル収納用ボックス、フリーザーでの保管に適した低密度・高密度ポリエチレンボトルなど、低温使用に対応した各種製品を製造しており、低温条件下でも通常の取り扱いに耐えられるよう、再生樹脂ではなくバージン樹脂の使用といった材料選定と構造設計の両面で対策が施されています。
脆化温度という指標を正しく理解し、日常的な取り扱いに気を配っていただくことで、研究データの再現性と実験の安全性はさらに高まります。
