バイオ研究の現場では、樹脂製ボトルやチューブから溶出する微量の化学物質は、細胞培養や酵素反応、微量分析において予期せぬ誤差やコンタミネーションの原因となり得ます。こうした材料由来のリスクを管理する国際的な指標のひとつが、米国食品医薬品局(FDA)が定めるFDA21CFRです。今回はこのFDA21CFRの概要と、その適合が重要である理由をご紹介します。
FDA21CFRとは

FDA21CFRは、米国食品医薬品局(FDA)連邦規則集(CFR)第21編の通称で、食品・医薬品・化粧品・医療機器など、FDAが所管する製品全般の規則を収めた法典です。中でもサブチャプターB/食品(人の消費用)の項目に属するPart.170〜189は、食品添加物および食品接触物質に関する規定群であり、食品や医薬品に直接・間接に触れる材料の安全性を定めています。
Part.170〜189の全体像
Part.170〜189は大きく5つのグループに整理できます。
- 1. 食品添加物の一般規定・申請手続き(Part.170・171)
- 2. 食品へ直接添加される物質の規定(Part.172・173)
- 3. 食品と接触する容器・包装材料に由来する間接添加物の規定(Part.174〜178)
- 4. 照射・暫定使用・GRAS(一般に安全と認められる物質)など特殊カテゴリの規定(Part.179〜182、184、186)
- 5. 使用が禁止された物質の規定(Part.189)
| Part.No | 主な内容 |
|---|---|
| 170 | 食品添加物(総則) |
| 171 | 食品添加物申請 |
| 172 | 直接食品添加物 |
| 173 | 二次的直接食品添加物 |
| 174 | 間接食品添加物(総則) |
| 175 | 間接食品添加物:接着剤及びコーティング成分 |
| 176 | 間接食品添加物:紙及び板紙成分 |
| 177 | 間接食品添加物:ポリマー |
| 178 | 間接食品添加物:補助剤、製造用添加剤、殺菌剤 |
| 179 | 食品の生産・加工・取扱いにおける照射 |
| 180 | 追加試験を条件とした暫定的使用許可物質 |
| 181 | 事前承認済み食品成分 |
| 182~186 | 一般に安全と認められる物質 |
| 189 | 使用禁止物質 |
ラボウェアとの関連性
樹脂製ラボウェアの多くは、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)といった樹脂から作られており、特にPart.174~178の適合性が重要視されます。
樹脂そのものについては、Part.177「間接食品添加物:ポリマー」において、使用可能なモノマーの組成や重合条件が樹脂の種類ごとに規定されています。成形加工時に使用される酸化防止剤や滑剤などの製造用添加剤はPart.178の対象となり、ラベル用の接着剤やコーティングを伴う場合にはPart.175・176の規定も関わってきます。またPart.174は、これら間接添加物全体に共通する適正製造規範(GMP)の考え方を定めています。

このように、Part.170〜189は、使用可能な物質の種類・純度・使用量上限を厳格に定めており、材料の選定や使用条件を規定することで、食品・医薬品用途に求められる安全性を担保しています。これは、微量の溶出物が測定値に影響しうる細胞培養、ELISA、質量分析、分子生物学実験などにおいて、樹脂ボトルに求められる低溶出性やロット間差の少なさ、という要件と密接に関連しています。
こうした背景から、一部の製薬・バイオ企業や品質管理を重視する研究施設ではFDA21CFRへの適合が要件として重視されるケースがあります。実験の目的や検出系の感度に応じて、どの部が根拠となっているかを供給元に確認することも、材料由来のバックグラウンドノイズを事前に見極める上で有効です。
最後に
FDA21CFR Part.170〜189で求められる原料管理・不純物管理の厳格さは、バイオ研究用ラボウェアの材料選定の信頼性においても極めて有用な指標となります。ターソンズでは、ボトルをはしめとした各種製品の成形に使用する樹脂について、DA21CFRの各規定への適合性を確認したうえで製造を行っております。日々の実験の再現性と信頼性を支える一助として、ラボウェアの原料選定の際にはぜひ本規制への適合状況もご確認いただければ幸いです。
