細胞培養や微生物培養に携わる研究者にとって、培地や血清の保管容器選びは地味に見えて実は重要なテーマです。今回は、PETG(ポリエチレンテレフタレートグリコール)ボトルがバイオ研究の現場で広く選ばれている理由と、その背景にある透明性を生む製造工程の工夫についてご紹介します。
研究現場でPETGボトルが選ばれる理由

培地や血清を保管する容器に求められる条件はいくつかあります。
まず挙げられるのが、内容物を目視で確認できる透明性です。血清や培地は保管中に色調の変化、濁り、沈殿の発生などが起こることがあり、これらはコンタミネーションや成分の劣化を示すサインになります。ガラス容器と同等の透明性を持つPETGボトルであれば、開封せずに内容物の状態を一目で確認でき、異常の早期発見につながります。
次に割れにくさです。ガラス容器は落下や衝撃で破損するリスクがあり、高価な血清や貴重な培地を扱う現場では大きな損失になりかねません。PETGは靭性(粘り強さ)に優れ、衝撃を受けても割れにくいため、安全に、そして安心して取り扱うことができます。
さらに溶出物の少なさも重要なポイントです。細胞培養は微量の添加物にも敏感に反応するため、容器由来の物質が培地に溶け出すことは避けなければなりません。PETGはビスフェノールA(BPA)を含まない樹脂であり、化学的に安定していることから、感受性の高い細胞培養用途でも安心してご使用いただけます。
加えて、軽量で取り扱いやすい点、ガンマ線滅菌などに対応できる点、シングルユースタイプとして再利用洗浄の手間やコンタミネーションリスクを減らせる点なども、多くの研究室で支持される理由です。
なぜPETGは透明に成形できるのか

ここで少し視点を変えて、PETGがなぜあれほど美しく透明に成形できるのか、その理由を樹脂の性質から見てみましょう。ではPETGの説明の前に、まずPETについて考えてみます。
PET(ポリエチレンテレフタレート)は、もともと結晶化しやすい性質を持つ樹脂です。高分子の鎖が規則正しく並んで結晶構造を作ると、結晶部分と非晶(アモルファス)部分の境界で光が散乱し、白く濁って見えるようになります。ペットボトルの底が白っぽく見えることがあるのは、この結晶化が部分的に進んでいるためです。
そのため、PETを透明な状態に成形するには、射出成形や吹込み成形の際に樹脂を急速に冷却し、結晶化が進む時間を与えないという工程上の工夫が必要となります。分子鎖が規則的に並ぶ前に固化させることで、透明な非晶状態で「凍結」させるのです。しかしこの方法は冷却条件を精密にコントロールする必要があり、成形できる形状や厚みにも制約が生じるという課題がありました。
そこで登場するのがPETGです。PETGは、PETの製造過程で使われるエチレングリコールの一部を、CHDM(シクロヘキサンジメタノール)という別の成分に置き換えた共重合体です。このCHDMが分子鎖の規則的な並びを妨げる働きをするため、PETGはそもそも結晶化しにくく、常に非晶質の状態を保ちやすい樹脂になっています。
その結果、PETGは急冷条件にそれほど神経質にならなくても安定して高い透明性を得ることができ、厚みのある部位や複雑な形状のボトルであっても、結晶化による白濁を起こしにくいという特長を持ちます。
透明性と研究現場のメリットのつながり

こうして見ると、研究現場での内容物を確認できる透明性というメリットは、単なる偶然ではなく、PETGという樹脂の分子設計そのものに由来していることがお分かりいただけるかと思います。CHDMによって結晶化が抑えられた非晶構造だからこそ、ボトル全体を通して均質な透明性が保たれ、培地の色調変化や微細な濁りまで見逃さず観察できるのです。
ターソンズは、こうした樹脂の特性を深く理解した上で、バイオ研究の現場に最適なボトルづくりに取り組んでいます。培地・血清の保管容器選びに迷われた際は、ぜひPETGボトルの透明性と安定性をお試しください。
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DNase・RNase・Pyrogenフリーで細胞培養用途にも対応し、ガンマ線滅菌済のため洗浄・脱Pyrogen等の処理も不要です。
また、USPクラスVI、FDA-21CFR、USP<661>、ISO10993-3の試験基準に準拠しており、細胞無毒性・非変異原性のため、内容物への影響を最小限に低減いたします。
